眼鏡代は治療材料費(医療扶助)
治療材料費として生活保護費から眼鏡代が出ることは皆さんご存知ですよね?
え、そうでもない…?
ではまず、眼鏡代の話から始めようと思います。
今回は、取扱い的にはケースワーカー向けかもだけど…受給される方も知っていた方がいいという感じです。
法律関係は…
生活保護費での眼鏡等の支給については、次のように定められています。
厚労省局長通知
医運第3-6-(3)-ア-(ア) (抄)
国民健康保険の療養費の支給対象となる治療用装具及び不潔に使用する生血は、その例により現物給付とする。
また、次に掲げる材料の範囲においては、必要最小限度の機能を有するものを、原則として現物給付によって行うものとすること。
義肢、装具、眼鏡、収尿器、ストーマ装具、歩行補助つえ、尿中糖半定量検査用試験機、吸引器及びネブライザー
以上のように定められており、医師が必要と判断すれば保護費で支給され、その費用の上限については、障害者総合支援法の基準に基づいて定められています。
眼鏡においては、医師の処方せんによって度数が定められ、その度数や乱視の有無等によって上限額が決まります。
そして、障害者総合支援法における眼鏡の耐用年数、つまり、通常どおり使用していれば使い続けられるよねという年数が4年と定められています。
ただ、4年経過するまでに紛失や破損等にて、改めて眼鏡が必要になることも当然に想定されますよね?
そんなとき、福祉事務所は「支給から4年以内なので、再支給は認められません」と判断する場合があります。
そこで今回は、耐用年数に基づいて支給の申請を却下した判断に対し、不服申し立ての結果、取り消された事例を紹介します。
審査請求(不服申立て)の事例
本裁決は大阪府によって行われており、全文はこちらです(生活保護裁決データベースより)。
ここでは、審査請求人(被保護者)が眼鏡を紛失したため、再支給を求めた申請を福祉事務所が却下し、その判断に対して、請求人が不服申立てをした結果、福祉事務所の手続きが不適切であったとして、却下処分が取り消しとなっています。
ここで重要なのは、第2:判断の(7)で語られているとおり、「眼鏡については、視力に適応したものが求められ、視力が悪化した場合には新規の眼鏡が必要となる場合があり、その場合、再支給の可否ではなく、新規の眼鏡の必要性について判断すべきことになるが、本件においては、処分庁(福祉事務所)が被保護者の視力の変化の可能性について考慮せず、再支給の可否の観点のみをもって本件却下決定を行ったことは必ずしも適正とみることはでき」ないという部分です。
まとめ
つまり、福祉事務所は「単純に耐用年数に達していないからという理由で申請を却下すると不服申立てで負けてしまう」ということになります。
ここでは、前回診断時の視力と変動がない場合については語られていませんが、福祉事務所は少なくとも申請時に改めて医師の処方せんを受けて判断をしなければならないことはわかりますね。
なお、私の自治体では耐用年数前に破損が生じたケースについて上庁に確認したところ「本人の生活に支障が出ていると医師が判断するのであれば、再支給もやむを得ないので、自立助長の観点から判断されたい」と言われたこともありますから、各自治体で最終的な判断は異なるかもしれませんがね。
ともあれ、もしも「耐用年数に達していないから」という理由で機械的に却下していた福祉事務所は、今後痛い目を見ないよう、適正な手続きを経て判断するようにしましょう。
以上、ご確認の程よろしくお願いいたします。
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