葬祭扶助 VS 成年後見人報酬
どうも、もとけぃです。
今回は、完全にいわゆる支援者向けの内容ですね。
成年後見を受けていた生活保護受給者が亡くなった際、生活保護による葬祭扶助を適用した後に、遺留金品等があった場合、葬祭扶助に充てるのか成年後見報酬を取ることができるのか、その取扱い等について解説していきます。
比較的単純明快な内容なので、これまたスナック感覚でお楽しみください(笑)
葬祭扶助について
まず、葬祭扶助(生活保護法第18条)についてです。
基本的な法律関係や基準額等については以前に記事にしていますので、そちらをご覧願います。
コチラ⇒生活保護の葬祭扶助における限度額の罠【死亡診断書料】
もちろん、この葬祭扶助は単身者に対しても適用することが可能です。
ただし、本人に遺留金品等があった場合、単純に扶助を支給して終了とはなりません。
死亡者に遺留金品等があった場合
単身で亡くなった方に遺留金品等があった際、例えば銀行からおろすというようにお金を動かすことはできなくなるため、基本的にひとまず葬祭扶助を支給することとなります。
とはいえ、資産はあったわけなので、支給しっぱなしということにはなりません。
この場合の取扱いについては次のように定められています。
生活保護法(抄)
(遺留金品の処分)
第76条 第18条第2項の規定により葬祭扶助を行う場合においては、保護の実施機関は、その死者の遺留の金銭及び有価証券を保護費に充て、なお足りないときは、遺留の物品を売却してその代金をこれに充てることができる。
2 都道府県又は市町村は、前項の費用について、その遺留の物品の上に他の債権者の先取特権に対して優先権を有する。
ざっくり言うと「葬祭扶助を支給する方に金銭等があった場合、それを葬祭費に充てることができるとともに、その金銭を他の者に優先して取ることができるよ」ということが示されています。
亡くなった方に何かしら借金があったとしても、ひとまず葬祭扶助にかかった分は先に福祉事務所が取ることができるということですね。
「え、じゃあ葬祭扶助の先取特権最強じゃん!」と思うかもしれませんが、実はこれよりも優先される先取特権があります。
その1つがこれから述べる「成年後見人報酬」です。
成年後見人報酬の先取特権
まず、「成年後見人報酬」とは、障害や認知症等によって自分のことをひとりで決められなくなった人の財産等を管理する人が、その対価として受け取ることのできる報酬のことを指します。
これは、家族等の身寄りがないので専門職が後見人となっている場合も少なくないため、先述のように単身で生活保護を受けていて亡くなる方というケースも当然にあります。
その際、後見人は葬祭扶助が取られてしまうから、もしそれで底を尽きてしまったら報酬は受け取ることができないのか…というとそうではありません。
これは、1番わかりやすくまとめられている皆大好き『東京都生活保護運用事例集』を見てみましょう。
東京都生活保護運用事例集(抄) (問6-89-2)単身者に対する葬祭扶助の適用(成年被後見人の場合) 成年後見を受けていた単身の被保護者が死亡し、遺留金品がある場合には、後見人報酬と葬祭扶助のどちらが優先されるか。 答 成年後見人報酬は、被成年後見人の財産に係る共益の費用とみなされる。民法第329条第2項但書により、共益の費用は特別の先取特権も含む全ての債権に優先する旨が規定されている。遺留金品に対して生活保護法に根拠を置く葬祭扶助に係る特別の先取特権と成年後見人報酬が競合した場合は、成年後見人報酬の先取特権が優先される。 したがって、成年後見を受けていた被保護者が死亡した場合には、遺留金品から成年後見人報酬の支払がされた後に、葬祭扶助費用に充てることになる。
ここにズバリ示されているとおり、葬祭扶助と成年後見人報酬では、成年後見人報酬の先取特権の方が優先されます。まぁ、福祉事務所としても中途半端に金銭が残っていても回収の手間が増えるので、先に報酬で全部取ってくれた方が楽ではあるんですけどね。
まとめ
さて、先取特権について、多少はご理解いただけたでしょうか。
福祉事務所の中で「葬祭扶助の先取特権が絶対」と勘違いしていた人もいるのではないでしょうか。
後見人等の方は、そう言われても正しい認識をつきつけ、泣き寝入りすることのないようにしましょう。
このように、生活保護手帳だけを読んでいては理解が深められないことは往々にしてあります。
やはり支援者は日々専門性を高めていく努力をしていく必要があることを思い知らされますね…。
以上、ご確認の程よろしくお願いいたします。
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