契約書に記載がないと生活保護費で火災保険料は出ない?

受給者向け
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生活保護制度における火災保険料の認定

寒い時期になってきました…。
火を使う機会も増え、火災も増えてくる、ということで(?)借家の火災保険料について少し詳しく語ろうと思います。
今回は裁決事例の紹介が主なので、生活保護受給中の方のみならず、ケースワーカーにもタメになる情報かもしれません。
ぜひとも読んでいただけたらと存じます。

通常、契約更新料や火災保険料については保護費で支給されます。
以前の記事で語っているので、詳しくはそちらをご参照ください。
借家の契約更新料、生活保護費が出る?

上記記事の厚労省通知では「必要やむを得ない場合には、契約更新に必要なものとして更新手数料、火災保険料、保証料を認定して差し支えない」とされています。

この、「必要やむを得ない場合」ですが、恐らく多くの福祉事務所が「賃貸借契約書に火災保険に加入する取決めが記載されているかどうか」で判断していると思います。
家主と借主間で保険に入る旨の契約がなされているのであれば、文句なく「必要やむを得ない」と言えるからですね。
では、契約書に書いてなければ保護費は出ず、火災保険料は自己負担しなければならないのでしょうか。
実は、そう簡単な話ではないんです。

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審査請求(不服申立て)の事例

さて、ここで事例紹介です。
これは、平成25年度に茨城県で起きた審査請求(不服申立て)で、結果としては火災保険料の申請を却下した処分が取消されました。
全文はコチラ(出典:生活保護裁決データベース)。

経緯(抜粋)

(1)審査請求人(被保護者、以下「Aさん」という。)は、アパートの契約更新を迎え、更新料及び火災(家財)保険料が必要となったため、■■福祉事務所に保護変更を申請。
(2)■■福祉事務所は「保険証券の内容等を確認したところ、火災保険ではなく家財保険であり、また、契約上必ず加入しなければならないものではないため、保護費で対応できない」として申請の却下通知を電話口でAさんに回答。
(3)それを受けAさんは「契約条項の一つに借家人の損害賠償責任について記載がある以上、借家人には責任が生じる。強制であれ任意であれ、家財保険は災害時の借家人の賠償責任を果たすことを目的としたものであるため、強制加入であるか否かを基準にして区別すること自体、無差別平等であるか疑問である」などとして、茨城県に対して審査請求に及んだ。

その結果が以下のとおりです。

茨城県の判断(抜粋)

 賃貸物件にかかる火災保険の場合は「建物」を対象とせずに「家財」のみを対象とするものが通常であり、「住宅総合保険」などと称して火災保険に家財保険や借家人賠償責任保険等を付帯するものがある。
 Aさんの加入する保険は対象が「家財一式」とされ、借家人賠償責任総合補償特約が付帯されており、アパートの賃貸借契約書には借家人の賠償責任について規定されている。
 Aさん(生活保護を受けている人)の場合、仮に賠償責任を求められるような事態が生じたときには、その責任を果たす資力はないことから、賃貸借契約の更新にあたっては当該保険に加入せざるを得ず、加入を拒否すれば、住居確保に大きな影響を及ぼすと考えられる。
 したがって、Aさん加入の保険の保険料については、限度額又は限度額に1.3を乗じて得た額の範囲内において、契約更新に必要なものとして認定することが妥当と考えられるため、本件却下処分は、これを取消す。

…というように判断されました。

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まとめ

ざっくりいうと本件では「契約書に火災保険料への加入が強制である旨の記載がなかったとしても、借家人の賠償責任について記されているんだから保険料を認定して保護費で支給するのが妥当だよね」と裁決されています。
つまり、契約書に強制加入の記載がないからといって機械的に認定していない福祉事務所は、もしかすると不適切な取扱いをしている可能性があるということです。

なお、ここでは別に借家人の賠償責任について記載があることも語られていますが、そもそも民法では賃貸人が義務を負わない部分の修繕等は借家人が負うこととなっていますから、仮に契約書上責任について書かれていなくても認定が妥当なのではないかと私は考えます。

いずれにせよ、福祉事務所が機械的に処分を下したものは、手続きが適切でないとして、審査請求で取消処分となるケースが多いように感じます。
法律と実情に即し、適正な判断をするというところが、生活保護制度の難しいところですね。

以上、ご確認の程よろしくお願いいたします。

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