滝川市生活保護費不正受給事件に学ぶ職務怠慢による損害賠償

CW向け
スポンサーリンク

職務怠慢職員に辟易しているあなたへ

今回はケースワーカー向けの記事です。
突然ですが、あなたの周りには「受給者と揉めるのが面倒だから」などといって、生活保護法第63条返還金や法第78条徴収金を処理しなかったり、不正受給の可能性があるのに放置したりしている職員はいませんか?
もしそんな輩がいたら、ぜひとも知っておいてほしい事件がありますので紹介します。

スポンサーリンク

滝川市生活保護不正受給事件とは

さて、皆さんはこの事件をご存知でしょうか。
これは、平成19年に北海道滝川市で発覚した、某暴力的な組合員の夫とその妻が2億円超の生活保護費を詐取し、夫婦ともども懲役刑が下されたというものです。
このこと自体も大問題ですが、もっと問題なのが「不正受給によって生じた損害を当時支給に関わった者が賠償するよう判決が下された」というところです。
なぜそのようなことになったのか、経緯を話していきます。

スポンサーリンク

不正受給の経緯

まず、某組合員とされている夫(以下「Aさん」という。)及びその妻(以下「Bさん」という。)は、滝川市で平成18年3月13日から生活保護を受給開始。
Aさんは、滝川市の福祉事務所が「極めて強度の不当要求者である」と認識している、いわゆるクレーマーであったといいます。
不正受給となったのは通院移送費で、Aさんは肝硬変や慢性呼吸不全を患っており、医師から「移送を要する。座位では呼吸苦が憎悪してしまうため高規格ストレッチャー寝台車が必須である」という旨の要否意見書が出ていました。
また、Bさんについても同様に、「めまい症があり、当科にて精査加療をすすめる。タクシー(ストレッチャー)について、移送の給付を要する」という旨の要否意見書が出ています(それぞれ、タクシーを要しない等と判断する医療機関もありました)。
滝川市は、このストレッチャー寝台車(タクシー)について、S介護福祉交通(以下「S交通」という。)ともう一つの業者の見積を比べ、S交通の方が安価であると判断し、医師の要否意見書に基づき、支給決定しました。

しかし、この支給額は1日約20万円と超高額!
常識で考えれば、生活保護にまでは至らない困窮世帯でも、1回の通院費にこれだけの費用をかけるなんてあり得ないと考えつきますよね。
また、後に裁判所も「極めて過剰といえる程度の頻回の通院」と太鼓判を押すほどに、必要以上に通院していたようです。
いっそ通院先近くに転居してしまった方がよっぽど安上がりなはずですね。

しかし、滝川市は医師からの意見書もあり、上庁である北海道庁にも相談のうえ「医師の診断で認められればやむを得ない」という回答を得ていることを大義名分に支給し続けます。
よっぽど、Aさんらとモメるのを避けたかったことが伺えますね。

もちろん、市の監査委員もバカではありませんので、タクシー代の支給について注意を呈していたようには見受けられますが、是正されることはありませんでした。
結果として、大した検討もされないまま、2億円超の通院移送費が支給されることとなりました。

そして、最悪なことに、このAさんらとS交通はグルで、実際には高規格ストレッチャーなんて利用しておらず、滝川市からS交通に高額な交通費を支払わせては、その大部分をAさんの懐に入れ、毎晩豪遊していたといいます。
また、高級セダン等を乗り回していたことも判明しています。
さすがに監査委員の結果を受けて警察に相談し、後にAさんらは詐欺罪で逮捕されることとなりますが、それまでの間、不正な移送費は支給され続けました。

悪を成敗し、これにて一件落着…とはなりません。
当然2億超など回収しきれるわけもなく、事態はさらに悪化します。
むしろ、自治体職員に読んでほしいのはここからかもしれません。

住民訴訟による職員の損害賠償

この事件が明るみとなると、滝川市の住民らが滝川市長に対し、「当時の市長、副市長、福祉事務所長、保護課長2名に対して支出額相当の損害賠償請求又は賠償命令をすること」を求めて訴訟を起こしました(地方自治法第242条の2第1項第4号)。
職務怠慢により市に莫大な損害が生じたのですから、当然と言えば当然ですね。
なお、保護課長が2名いるのは、途中で異動があったためです。

滝川市は、「Aさんらの通院移送費の不正受給について、支給決定に関与した職員らが不正受給だと気づくことはできなかった」と主張し争いました。
しかし、裁判では「通院移送費が高額であることに疑問を抱くことは極めて容易であった」「虚偽であることを認識することは、極めて容易であった」と判断されています。
そのうえで、札幌高等裁判所では、市長及び副市長の法的責任は否定されたものの、「福祉事務所長に9,605万円の賠償責任、3,860万円の民事上債務不履行責任」「保護課長(前期)に1,185万円の賠償責任、4,350万円の民事上債務不履行責任」「保護課長(後期)1,070万円の賠償責任、3,850万円の民事上債務不履行責任」を認める判決がなされました。

市としての懲戒処分

もちろん、これだけでは終わりません。
金銭面の賠償のみならず、市長及び副市長には監督責任を果たさなかったことへの処分。支給に関係した職員には、地方公務員法上の服務規程違反や信用失墜行為等を懲戒処分がなされました。
詳しくはコチラ⇒滝川市:生活保護費詐欺事件に関する報告書

これを見るに、市長や副市長の減給、福祉事務所長や保護課長の停職処分はもちろんのこと、当時担当していたと思しき職員8名にも数箇月間減給10%の処分がなされています。今回、異動となった保護課長や職員は前例踏襲をしただけですが、それは損害賠償を免れる理由にはなり得ないということがわかりますね。

また、賠償については、市長や副市長、職員の給与減額や寄付、犯人からの回収を行い、何とその他市職員全体の給与を削減することで賄い、債権放棄に至っています。
まったく関係ない職員からしたらいい迷惑ですし、担当していた職員らの居心地はさぞかし悪かったでしょう。

まとめ

この事件を通して私が1番言いたいことは、「ケースとの折衝を避けたいからといって、本来行わなければならない処分を先送りにしてしまうと、結局自分が痛い目を見る」ということです。
日和見主義で「次の担当にでも任せとけばいいや」と思っていても、結局その爆弾が爆発したとき、当時担当していれば火の粉がかかってくるものです。
また、生活保護費が血税で賄われているということも当然に忘れてはいけません。
繰り返しとなりますが、もしもあなたの周りに不正受給案件等を処理せず先送りにしている職員がいたら、ぜひ事件のことを教えてあげるか、このページを見せてあげてください(笑)

以上、ご確認の程よろしくお願いいたします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました