「私のような状況で生活保護の申請ってできますか?」
ケースワーカーとして働いているとき、よく電話でこういった相談を受けました。
この質問に対する回答としては「生活保護は誰でも申請できます」に尽きます。
本日は、生活保護の申請権についてご説明いたします。
まず、生活保護の申請については次のように定められています。
法律関係は…
生活保護法(抄)
(申請保護の原則)
第7条 保護は、要保護者、その扶養義務又はその他の同居の親族に基づいて開始するものとする。但し、要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請がなくても、必要な保護を行うことができる。
また、厚生労働省事務次官通知第9において、
生活保護は申請に基づき開始することを原則としており、保護の相談に当たっては、相談者の申請権を侵害しないことはもとより、申請権を侵害していると疑われるような行為も慎むこと。
…と定められています。
これらが何を示しているのかというと
「生活保護の申請自体は誰にでもできるし、福祉事務所(自治体)がそれを妨げることはできない」…ということです。
具体例として
極端な話、仮に資産が1億円ある等、生活保護に該当しないことが明らかな場合であっても、本人が「生活保護を申請します」という意思を示せば、福祉事務所はそれを妨げてはいけません。
あくまでも申請を受理したうえで、「資産が○○円あるため、最低生活が維持可能と判断し、申請を却下します」等と判断する必要があり、感覚で申請を取り下げることはできません。
よく取り沙汰される「資産が○○円あるなら保護の申請はできない~…」といった水際作戦は明らかに違法です。相談者が「生活保護の申請したい」という意思を示しているにも関わらず、それを受理しようとしない行為は違法となります。
確かに、私もケースワーカーとして働いていたので、新たに生活保護の申請を受けると、別の業務と並行して遺漏なく調査を行い、原則14日以内には生活保護が開始となるか否かの会議をしなければならなくなるので、面倒くさいという気持ちもわからないでもないですが、決まりは決まりです。
水際作戦への対策
そのため、生活保護を申請したいと考えている人は、お住いの最寄りの生活保護を担当する部署に行き「生活保護を申請します」という意思を明確に示してください。
水際作戦をしてくる自治体があるようであれば、必要に応じて、生活困窮者を支援してくれるNPO法人や、共産党の議員に相談するのも有効です。
元ケースワーカーとしては、そういった人たちと一緒に相談に来られるのが一番緊張します(笑)
まぁ悪質な福祉事務所でなければ、誰と来ようと対応はかわらないはずなんですけどね。
ただ、申請が通れば必ず生活保護が受けられるということではありません。
申請があった時点での預貯金や収入等が国の定める1ヶ月の最低生活費と比べてどうなのかを計算し、収入の方が上回っていれば、生活が可能であると判断し、申請は却下となります。
こればかりは、自治体がよほどおかしなことをしていなければ、国が定める基準に則って判断しているため、再度預貯金や収入が減少した際に改めて申請をするほかありません。申請に回数制限はないですからね。
そのため、最初の質問に対する元ケースワーカーの助言としては、「生活保護の申請は誰にでもできます。仮に申請の結果却下となれば、当面の生活ができるだけの資産はあるわけだから、その資産がなくなるまでは生活し、なくなった段階で改めて保護の申請をしましょう」です。
以上、ご確認の程よろしくお願いいたします。
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