【生活保護】住宅維持費の認定に理由はいらない?【裁決事例】

受給者向け
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生活保護制度における住宅維持費について

私たちは、普段生活をしている中で家の物が古くなったり、壊れてしまったりして、その修繕や買換えをすることがあります。
生活保護を受けている方がそのような事態に陥った場合、制度に定められている物品等であれば、その修繕費が出ることがあります。
いわゆる「住宅維持費」というやつですね。

今回は、そんな住宅維持費について少し解説するとともに、過去に福祉事務所が判断した申請却下の処分が取消された事例について紹介いたします。

法律関係は

まず、住宅維持費については次のように定められています。

厚生労働省社会・援護局長通知第7-4-(2)-ア
 保護の基準別表第3の1の補修費等住宅維持費(※)は被保護者が現に居住する家屋の畳、建具、水道設備、配電設備等の従属物の修理又は現に居住する家屋の補修その他維持のために経費を要する場合に認定すること。
 なお、この場合の補修の規模は、社会通念上最低限度の生活にふさわしい程度とすること。

※年額124,000円(令和3年6月15日時点)

以上のとおりです。
なお、年額124,000円とは「はじめて住宅維持費を認定されたときから将来に向かって1か年」をいうものです。
つまり、今日、54,000円の物を修理して支給してもらった場合、来年のその日まで残額は70,000円となり、1年経過すると元通り124,000円に戻る(改正があった場合はその額になる)というものです。

申請の際は、事前に見積書の提出を求める福祉事務所がほとんだと思うので、必ず事前に相談するようにしましょう。

審査請求(不服申立て)の事例

さて、簡単な説明は以上にして、事例紹介です。
これは、平成23年度に大分県で起きた審査請求(不服申立て)で、結果としては保護変更申請却下処分が取消されました。
全文はコチラ(出典:生活保護裁決データベース)。

経緯(抜粋)
(1)審査請求人(被保護者、以下「Aさん」という。)は平成23年6月21日に「先日、自宅の窓ガラスが割られたので修理費用を出してもらえないか」と大分県■■福祉事務所に相談。
(2)■■福祉事務所は「不可抗力により破損したものであれば費用を出せるかもしれないが、その証明がなされないのであれば認められない」と回答。
(3)Aさんは、平成23年7月1日に生活保護変更申請書(住宅補修)を■■福祉事務所に提出。
(4)■■福祉事務所は、住宅補修の申請について却下することを決定し、平成23年9月8日、Aさんに「一時扶助申請却下通知書」を交付。却下理由は「事故による破損のため」とした。

これに対し、Aさんは「自己破損だからという理由で却下したことは不当である」とし、平成23年10月29日に■■福祉事務所の上級庁である大分県に対し審査請求を行いました。
その結果が以下のとおりです。

大分県の判断(抜粋)
 生活保護法第2条は「すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を、無差別平等に受けることができる」と規定し、生活に困窮する日本国民で法第4条第1項等の要件を満たしている者は、保護を要する状態に立ち至った原因の如何等に関わらず保護を受けることができると解される(無差別平等の原理)。この原理は、生活保護を申請する者はもとより、生活保護を受給中の者にも当然適用されるものである。
 この原理により、保護は「保護を要する状態に立ち至った原因の如何等にかかわらず」行われるべきであり、保護変更申請の原因である窓ガラスの破損が「自己による」か「他者による」かだけでは処分の根拠として不適切である。

 そのため、本件却下処分は、これを取消す。

…というように判断されました。

まとめ

住宅維持費の支給の際に「自分でやったかどうか」を検討材料としている福祉事務所、意外とあるのではないでしょうか。
もちろん、本人が故意にやったのであれば「生活上の義務に反している」として、支給の可否とは別に指導されるかもしれないので注意です。


以上、ご確認の程よろしくお願いいたします。

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