扶助費の再支給について
生活保護費は基本的に、毎月その月の生活費として前渡しされる場合がほとんどと思います。
では、その前渡しされた保護費を紛失したり奪われたりしたら…?
困ったなんてもんじゃありませんよね!
今回はそんなときに保護費を再支給してもらえるのかを解説していきます!
法律関係は…
生活保護費の再支給については、厚労省局長通知と課長問答で定められています。
厚生労働省社会・援護局長通知第10-4 扶助費の再支給 前渡された保護金品又は収入として認定された金品(以下「前渡保護金品等」という。)を失った場合で、次のいずれかに該当するときは、失った日以後の当該月の日数に応じて算定された額の範囲内において、その世帯に必要な額を特別基準の設定があったものとして認定できるものであること。 (1)災害のために前渡保護金品等を流出し、又は紛失した場合 (2)盗難、強奪その他不可抗力により前渡保護金品等を失った場合
上記のような場合には再支給が検討されます。
そして、再支給の際には次のような点に留意することとされています。
厚労省保護課長通知 問(第10の16)扶助費の再支給を行うにあたり、留意すべき事項を示されたい。 答 次の点に留意すること。 1 盗難、強奪その他不可抗力の認定 (1)盗難、強奪 金額の多寡を問わず、警察に被害届を出し捜査依頼を必ず行わせること。 (2)その他不可抗力 その他としては遺失等が考えられるが、社会通念上一般に要求される程度の注意をしたにも関わらず、遺失したことが挙証されない限り、不可抗力とは認められない。遺失の場合も、警察に遺失届の提出を必ず行わせること。 2 調査及び指導等 (1)事実の調査 被保護者から扶助費の再支給の申請があった場合には本人及び関係者等から事情を詳細に聴取するとともに、必要に応じて実施調査等を行い、失った理由、金額、当時の手持金等について十分に確認すること。 (2)扶養義務者に対する扶養依頼等の指導 盗難等により保護金品を失ったという特別な事情があるので、通常に扶養は期待できない者も含め援助を受けることを指導し、扶養依頼を行うこと。 3 金品管理等生活指導 一般に、保護費を紛失し再支給を申請するケースは、保護費の大部分を携帯し金銭管理に注意を欠く例が多いので、生活上の指導を十分に行い、必要以上の金品を携帯することのないよう配慮すること。 4 預貯金の活用 被保護者が預貯金を有しており、これを当てれば最低生活が可能と認められる場合は、自己の急迫・緊急状態を回避するため、最優先として預貯金を生活維持に充てさせること。
以上をまとめると、保護費の再支給が認められるには、次のような条件を要することがわかります。
①災害により保護費を流出するか、紛失した場合 ②盗難や強奪等による不可抗力により保護費を失った場合 ③盗難や強奪のときは、警察に被害届を提出すること ④その他不可抗力(遺失等)により保護費を失った際は、社会通念上一般に要求される程度の注意をしたにも関わらず、遺失したことが挙証されるとともに、警察に被害届を提出すること
また、再支給の際には、事実の調査、扶養義務者への援助依頼の指導、必要以上の金品を持たないように指導及び預貯金により生活ができるのであれば生活維持に充てることの指導等、様々な条件が定められています。
しかし、それらの条件をクリアしており、急迫した状況にあるときは、保護費が再支給される場合があります。
過去に、この「社会通念上一般に要求される程度の注意」が争点となり、審査請求の結果、不支給処分が取消された裁決があります。
審査請求(不服申立て)の事例
本裁決は京都府によって行われており、全文はコチラです(生活保護裁決データベースより)。
これは、審査請求人(被保護者)が生活保護費を強盗に遭ったとして、保護費の再支給を求めたところ、処分庁(京都市中京福祉事務所)が「深夜の時間帯に当該月の生活に充てるべき扶助費の大部分をもって外出したことは明らかに不自然であるため、本件は強奪と認められないもの」と判断し、再支給を却下しました。
それに対し、審査庁(京都府)は「社会通念上一般に要求される程度の注意とは、遺失等の場合にこれを不可抗力と認めるかの判断基準であるから、処分庁の主張には理由がない」として、本件処分を却下しました。
厚労省保護課長通知で示されているとおり、「社会通念上一般に要求される程度の注意」は盗難、強奪の項でなく、その他不可抗力の項に記されているため、それを本件の判断基準にするのは不適切だったということですね。
まとめ
他の裁決を見るに、少なくとも初回の保護費再支給については、申告があれば認めざるを得ないんじゃないかなと思います。ぶっちゃけ、「保護費を盗られた」と言って再支給の申請をすれば、福祉事務所は認めざるを得ないような気もします。
もちろん、実際に紛失や盗難等があった際は、適正に再支給の申請をした方がよいと思いますが、虚偽の申告は犯罪になるので厳禁です!
生活保護費に限らず、生活費は日常生活上必要不可欠なものであるため、落としたり盗られたりしないよう細心の注意を払いましょう。
以上、ご確認の程よろしくお願いいたします。
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