生活保護の申請について
生活保護の申請と言えば、開始の際も変更の際も、各福祉事務所所定の申請書の提出を求められますよね?
もっとも、「水際作戦」が叫ばれる昨今、申請書すら渡してもらえないこともあるかもしれません。
しかし、実際にはその申請書、必要ありません!
今回は、生活保護を申請する際に、必ずしも所定の申請書を提出する必要がないということについて、語っていこうと思います。
法律関係は…
生活保護の申請については、次のように定められています。
生活保護法(抄) (申請による保護の開始及び変更) 第二十四条 保護の開始を申請する者は、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を保護の実施機関に提出しなければならない。ただし、当該申請書を作成することができない特別の事情があるときは、この限りでない。 一 要保護者の氏名及び住所又は居所 二 申請者が要保護者と異なるときは、申請者の氏名及び住所又は居所並びに要保護者との関係 三 保護を受けようとする理由 四 要保護者の資産及び収入の状況(生業若しくは就労又は求職活動の状況、扶養義務者の扶養の状況及び他の法律に定める扶助の状況を含む。以下同じ。) 五 その他要保護者の保護の要否、種類、程度及び方法を決定するために必要な事項として厚生労働省令で定める事項 9 第一項から第七項までの規定は、第七条に規定する者からの保護の変更の申請について準用する。
生活保護法施行規則(抄) (申請) 第一条 生活保護法第二十四条第一項(同条第九項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の規定による保護の開始の申請は、保護の開始を申請する者(以下「申請者」という。)の居住地又は現在地の保護の実施機関に対して行うものとする。 3 法第二十四条第一項第五号(同条第九項において準用する場合を含む。)の厚生労働省令で定める事項は、次の各号に掲げる事項とする。 一 要保護者の性別及び生年月日 二 その他必要な事項
何が書かれているかというと、保護の申請を行うには、上記の情報を記す必要があるということです。
ただ、それ以外の様式については定められていないことから、上記の情報さえ記していれば、申請は可能だということを裏付けているとも言えます。
また、厚労省は「生活保護の開始申請は、必ず定められた方法により行わなくてはならないというような要式行為ではなく、非要式行為であると解すべきであるとされている」とも述べています(厚労省保護課長通知『生活保護問答集について』問9-1 口頭による保護の申請)。
さらに、ここではこの考えに基づき「口頭による開始申請も認められる余地があるものといえる」とも謳っています。
ただ、保護の申請は、申請の意思を明確に表示することにより、保護申請が行われたかどうかを客観的に見ても明らかにしておく必要がありますよね。
そして、今回もバッチリ申請についての裁決事例を用意しています!
審査請求(不服申立て)の事例
本裁決は鹿児島県によって行われており、全文はコチラです(生活保護裁決データベースより)。
これは、審査請求人(被保護者)がメールで移送費等の支給について求めたにもかかわらず、不作為庁(■■福祉事務所)から明確な回答がないとして審査請求をしたところ、期限を過ぎても被保護者への通知がないとして、違法(不作為)と判断されたものです。
ここでは、次のようにも語られています。
メール(書面)による申請は、生活保護法第7条、法第24条第1項及び第9項に基づく、申請権を有する代理人からの保護の変更申請であって、定められた申請書によらないものの、必要事項が記載されており、有効なものであると考えられる。
これは、いち都道府県の判断にしかすぎませんが、今後媒体の電子化が進んでいくことが予想されると考えると、当然の帰結とも言えますね。
また、悪く言えば紙媒体で受け取ったものなんて破り捨ててしまえば知らんぷりできるので、メール等の確実に記録が残る媒体である方が、客観性は高いと言えるかもしれません。
さらに、申請書を渡さない等という悪質な水際作戦も防ぐことができます。
つまり、申請書の提出はあくまでも福祉事務所の事務処理上の都合であって、決められた様式の提出がないことをもって申請がなかったことにはできないということです!
あくまでも原則論でいえば福祉事務所の定める申請書を提出すべきですが、もしも申請を拒否するような悪質な福祉事務所がある場合は、メール等で提出するというのも、ひとつの手段となり得ます。
その際は、上記の法律で定められている情報を記載し、送付するようにすれば間違いありませんよ。
以上、ご確認の程よろしくお願いいたします。
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