福祉事務所の録音禁止規程について
どうも、もとけぃです。
生活保護の相談・申請は、基本的に各自治体の福祉事務所で行われます。
そしてたまに、相談窓口には「録音禁止」という貼り紙のある福祉事務所があります。
よく取り沙汰されるのは「何かやましいことがあるから録音禁止にしているんじゃないか?」という声。
今回は、その「録音禁止」が正当なものなのか、私の考えを述べていこうと思います。
※語っているうちに長くなってしまったので、たまにはブログらしく前編後編に記事をわけます。
庁舎管理規則
まず、録音禁止については、各自治体の「庁舎管理規則」で定めているところがあります。
東京都渋谷区の例を見てみましょう。
渋谷区庁舎管理規則(抄) (禁止行為) 第6条 庁舎においては、次に掲げる行為をしてはならない。 (16) 撮影、録音、録画、放送その他これらに類する行為をすること。 2 前項の規定にかかわらず、庁舎管理者は、同項第10号から第16号までに掲げる行為について、特別の事情があり、かつ、公務の円滑な遂行を妨げるおそれがないと認める場合は、当該行為を許可することができる。 (禁止行為等の違反者に対する措置) 第7条 庁舎管理者は、次の各号のいずれかに該当する者に対して必要な指示、警告等の措置を講じ、庁舎の立入り若しくは使用の禁止、庁舎からの退去又は物件の撤去を命じ、又は自ら物件を撤去することができる。 (1) 前条第1項に掲げる行為を行った者又は行うおそれのある者(同項第10号から第16号までに掲げる行為については、同条第2項の規定による許可を受けた者を除く。)
このように「庁舎内においての禁止行為を掲げ、その行為をした者の退去を命じることができる」と定めている自治体が多い印象です。
そもそも録音等の禁止を明記していないところもありますけどね。
ここで重要な点は、条例ではなく規則で定めているということです。
条例と規則の違い
そもそも、条例と規則はどう違うのか、簡単にまとめます。
それぞれ、地方自治法にて定められているものです。
地方自治法(抄) 第14条 普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定することができる。 2 普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない。 第15条 普通地方公共団体の長は、法令に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則を制定することができる。
つまり、住民に義務を課したり、権利を制限したりする際は、原則として条例で定めなければならないということです。
そして規則は、その条例を実施するための事務について細かく定めているというものが多いです。
これを見るに、庁舎内での録音を禁じるというのは住民の権利を制限していることになるため、本来であれば条例で定めるか否かを判断しなければいけないのではと思います。
個人情報の保護の観点
自治体の中には、「周りの相談者の個人情報やプライバシー等の保護のため録音を禁止している」と謳うところもあります。
確かに、地方公共団体には、個人情報の適正な取扱いについて必要な措置を講ずるよう法律で努力義務が課せられているため、言い分はわかります。
個人情報保護法(抄) (地方公共団体等が保有する個人情報の保護) 第11条 地方公共団体は、その保有する個人情報の性質、当該個人情報を保有する目的等を勘案し、その保有する個人情報の適正な取扱いが確保されるよう必要な措置を講ずることに努めなければならない。
ただ、同法において「個人情報」とは次のように定義されています。
個人情報保護法(抄)
(定義)
第2条 この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
1 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(文書、図画若しくは電磁的記録(電磁的方式(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式をいう。次項第2号において同じ。)で作られる記録をいう。第18条第2項において同じ。)に記載され、若しくは記録され、又は音声、動作その他の方法を用いて表された一切の事項(個人識別符号を除く。)をいう。以下同じ。)により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)
簡単に言うと、様々な情報を紐づけると、特定の個人が浮かび上がってくるようなものを言います。
例えば、誰かの顔が映った写真を落としてしまったとしても、その人を知らなければそれだけで誰かは特定できないため、極端に言えば個人情報ではないということです。
これはつまり、個人情報を理由に録音を禁止する自治体は、そもそも話した内容が他の人の耳に入ってしまう相談環境であることを自白してしまっているということです。
生活保護は権利ではあるとはいえ、できれば受けたくはないという気風も残っている(厚労省談)ことから、そもそも自治体側がその相談内容を漏らさない環境を確保する必要があるため、それを住民側に求めるのは筋違いかなという印象です(多少、藁人形論法的ですが)。
次回に続く
こういった話の進め方は初めてですが、語るうちに長くなってしまったので、続きは後編に分けて記事にしようと思います。
次回は地方公共団体の合理的配慮を絡めつつ語っていこうと思います。
以上、ご確認の程よろしくお願いいたします。
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