【生活保護】福祉事務所の指導がなくても転居費用が出る場合【裁決事例】

受給者向け
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転居費用に福祉事務所の指導は必須?

どうも、もとけぃです。
最近、どうにも住宅関係の話をすることが多くなってきたような気がしますが、本日も転居について書かせていただきます。
今回も裁決事例を紹介しようと思ますのでお楽しみに!

転居の際にかかる費用のうち、生活保護費で負担可能なものに「移送費(引っ越し代)」「敷金等」があります。
一つひとつ説明していきましょう。

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移送費(引っ越し代)とは

ここでの移送費は、通院等の際の交通費ではなく、転居の際にかかる荷造りや荷物の運搬の費用のことをいいます。
厚労省通知では、取扱いについて次のように定められています。

厚労省局長通知第7-2-(7)-ア-(サ)(抄)
 被保護者が転居する場合又は住居を失った被保護者が家財道具を他に保管する場合及びその家財道具を引き取る場合で、真にやむを得ないとき。この場合、荷造費及び運搬費を要するときは、実施機関が事前に承認した必要最小限度の額を認定して差しつかえない。

つまり、転居の際、真にやむを得ないと認められれば最小限の額を生活保護費で支給できることとなります。
なお、「真にやむを得ないとき」とは、転居そのものの必要性を問題とするものではなく、転居等に伴う移送費の必要性を問題としているため、「転居の必要がないのに転居したため支給しない」という取扱いは違法です(これも裁決事例がありますが、また機会があれば詳しく書こうと思います)。

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敷金等とは

敷金等については、以前記事にまとめたものがありますので、そちらをご参照いただけたらと存じます。
コチラ⇒徹底解説!生活保護費で敷金が支給される範囲とは?

支給されるケースは思いのほか多いように見受けられますが、本日はこの中の1つに焦点を当てたいと思います。

厚労省社会・援護局保護課長通知(抄)
問(第7の30)局長通知第7の4の(1)のカにいう「転居に際し、敷金等を必要とする場合」とは、どのような場合をいうか。
答 「転居に際し、敷金等を必要とする場合」とは、次のいずれかに該当する場合で、敷金等を必要とするときに限られるものである。
2 実施機関の指導に基づき、現在支払われている家賃又は間代よりも低額な住居に転居する場合

これは文字どおり、福祉事務所の転居指導により、今の家賃よりも低額な住宅に転居した場合、敷金等を支給できるということです。
では、ここで気になるのが「指導がないにもかかわらず低額家賃の住宅に転居した際には支給されないのか?」というところでしょう。
このことについて、審査請求で争った事例がありますので紹介します。

裁決事例

本裁決は福岡県によって行われており、全文はコチラです(生活保護裁決データベースより)。

被保護者(審査請求人、以下「Aさん」という。)は、家賃月額30,000円の住宅に住んでいましたが、風呂桶が汚れていたり、やぶ蚊やネズミが出たりで住める環境ではなかったため、家賃月額11,800円の市営住宅に転居することを決め、「転居のための敷金及び引っ越し費用を出してほしい」と述べました。
しかし■■福祉事務所(処分庁)は、古くて住めない状態にあるとは認識しておらず、「家賃が安くなる場合であっても実施機関の指導に基づかない転居の場合には、転居費用は認められない」と説明しました。
平成23年10月3日、Aさんが市営住宅に転居及び住民票の異動が完了し、同年11月18日に転居費用についての「一時扶助申請書」を提出しました。
その申請に対し、福祉事務所は同年12月20日付けで「転居の必要性が認められないため」という理由で、申請却下したため、同月26日にAさんが福岡県に対し審査請求を行ったものです。

福岡県の判断は、次のとおりです。

①実施機関の指導に基づく転居についての規定は、家賃基準を超える住居に居住する場合を想定しているものと解され、請求人のように家賃基準額以内の住居に居住する者がさらに低額家賃に転居する場合においても、実施機関の転居指導がなかったことをもって敷金等を認めないとすることは相当ではないと思料される。

②敷金の支給を認めなければ、現状より低家賃の市営住宅への転居を処分庁が拒否した結果となることから、住宅扶助費の減額となる今回の転居に対しては、最低限度の生活の保障という法の目的に照らし、その必要性や合理性を検証し、転居の可否について検討する余地があったものと判断される。

よって、十分な検討がなされず行われた本件処分は不当であると判断せざるを得ないため、これを取消す。

つまり、「住宅扶助基準額内の家賃の住居からさらに低額家賃の住居に転居する場合、確かに福祉事務所が指導することはないけど、生活保護制度の原理からいうと、ちゃんと検証せず、指導していないことをもって支給しないのは不適切だったよね」と言われています。
また、ついでですが、住宅の老朽又は破損により居住にたえない状態であったか、病気療養上著しく環境条件が悪いと認められるか等も訪問や病状実態調査等による検討不足であったことが指摘されています。
福祉事務所側が変更申請を却下するのにも相当な根拠が求められることがうかがえますね。

まとめ

今回のケースも、あくまで一例といえば一例ですが、どうあれ頭ごなしに「指導していないので転居費用は出せません」としてしまうと不当処分になる可能性があるというところはご理解いただけたかと思います。

正しい知識を広く知らせるため、今回の記事が有益だと思われた方はSNS等でどんどん拡散していただけると幸いです!


以上、ご確認の程よろしくお願いいたします。

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