大学等就学者への生活保護の適用について
どうも、もとけぃです。
現在、各地で物議をかもしている大学等の就学者への生活保護適用。
厚労省による5年に1度の改正にかかる議論では、依然として大学生への保護は適用されなさそうな勢いです…。
そこで、現行の制度において、そもそも大学生への生活保護はどのように取り扱われているのか。
そんな疑問についてパパッとまとめてみようと思います。
世帯分離について
まず、現行制度において、大学に通学する者への生活保護は原則適用されないこととなっています。
ただし、保護を受ける世帯に大学生がいたからとして必ずしも退学して就労しろとはならず、次のように定められています。
厚労省局長通知第1-5(抄)
次のいずれかに該当する場合は、世帯分離して差しつかえないこと。
(1)保護開始時において、現に大学で就学している者が、その課程を修了するまでの間であって、その就学が特に世帯の自立助長に効果的であると認められる場合
ちなみに、世帯分離とはざっくり言うと「普通に取り扱ったら同じ世帯になるけど、特別な理由があるからその人は特別に世帯にいないものとして取扱うよ」という主旨のものです。
つまり、大学生は世帯員にならないので、就労指導を受けることはありません。
また、上記では大学在学中の者が保護を受けることとなった場合について書かれていますが、保護受給中に大学へ進学することが認められないかというとそうではなく、次のように示されています。
厚労省保護課長事務連絡 生活保護問答集について(抄) 問1-52 大学進学を希望する者 (問)大学に進学する希望のもとに高等学校で就学している者についてはその「就学が世帯の自立助長に効果的である」ことが認められるか。 (答)設問のように大学に進学したいとの希望をもっている者であっても、高等学校への就学によって得られる技能や知識により、稼働能力の活用を図ることが可能となり、世帯の自立助長に役立つと判断されるものについては、就学を認めて差しつかえない。
このように、生活保護制度において大学進学を認めないという決まりはありませんが、進学すると世帯からは外されるので、自分らで何とかしてねという感じです。
大学生でも医療扶助は適用?
これまで原則として大学生には生活保護は適用されないと述べてきましたが、実は必ずしもそうではありません。
特例が示されており、その中でも特に周知すべき問答について紹介します。
厚労省保護課長事務連絡 生活保護問答集について(抄) 問1-57 大学就学者の医療費の取扱い (問)大学で就学している単身者が病気のために入院したが出身世帯がなく、自力等によるその医療費の支出が不可能である場合の取扱いはどうするか。 (答)大学で就学する者に対しては本来法による保護は行われないのであるが、設問のごとく病気のため入院し働くことができない者に対してまで、大学に在籍していることを理由に保護を拒むのは適当といえない。通常の手続きにより要否及び程度の判定を行って保護するとともに、休学等の手続をとり授業料その他の負担を免れるよう指導すべきである。なお、出身世帯がある者については、世帯を単位として要否判定を行わなければならない。
このように、基本的に大学生に対して保護が行われない旨は念を押して述べているのと同時に、病気等で働けない状態にあるのであれば大学生であることをもってして保護しないのは不適切とも示しています。
また、世帯分離をされていた方については、元の世帯に戻したうえで要否判定を行うこととしていますね。
…が、結局特例は特例です。
一定の譲歩感をにおわせつつも、中には奨学金によって通っている方もおり、休学による負担等を考えるとまだまだ無責任な取扱いにも感じますけどね…。
まとめ
大学生にも必ずしも生活保護が適用されないというわけではない…というところはご理解いただけたでしょうか。
この秋から本格的に見直しが始まる生活保護制度。
はっきりいって現時点での厚労省の考えとしては大学生への保護の適用には否定的です。
高等学校への就学費用について生活保護での支援が議論されたのが平成16年頃。
それから20年…大学への進学等について改めて検討すべき段階に来ているのかもしれませんね。
以上、ご確認の程よろしくお願いいたします。
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