ご質問
どうも、もとけぃです。
今回も質問箱にご質問いただいた内容について解説をしていきたいと思います。
今回いただいたご質問は次のとおりです。
「息子(非生活保護・別世帯)のための生活費だとしても、私の口座に入金されたお金は私の収入になるのでしょうか?」
これについて、収入認定処分取消しとなった裁決事例を交えて回答・解説していきます。
今回は裁決事例豪華2本立てですのでお楽しみに!
裁決事例①
1つ目の裁決は三重県(平成27年8月12日)によって行われており、全文はコチラです(生活保護裁決データベースより)。
要保護者(審査請求人、以下「Aさん」という。)は、入院等の医療費の支払いが困難になったとして平成27年4月30日に生活保護の申請を行いました。しかし、■■福祉事務所(処分庁)は、資産の活用により最低生活費が維持可能であるとして申請を却下したため、Aさんは審査請求を行いました。
ここで資産として認定されたのは、Aさんの妹のシラス鰻の取引によって得られた収入でしたが、Aさんは、その取引の組合員でない妹に名義を貸して入金してもらっていただけで、取引によって得た収入はAさんの手には渡っていませんでした。
また、保護の申請日より前の4月27日時点で、実際に組合員としての名義が妹に是正されていることもあったことも含め、三重県は「少なくともAさんの利用し得る資産であると認めることはできない」として、本件収入認定・申請却下処分は不当と判断し、処分取消の裁決をしたのです。
裁決事例②
2つ目の裁決は山形県(平成28年10月4日)によって行われており、全文はコチラです(生活保護裁決データベースより)。この資料では珍しく福祉事務所名が明かされていますが、本文中では伏せます。
被保護者(審査請求人、以下「Bさん」という。)は、平成28年5月10日及び6月2日に、生命保険による給付金を受領しました。ただ、この給付金の受取人はBさんでしたが、保険自体の契約者はBさんとは別の者(以下「Cさん」という。)であり、保険料についてもCさんが支払っていました。そのため、Bさんは「給付金はCさんが受領すべきもの」と誤認しており、給付金が入金される度に、Cさんの口座に送金していました。
しかし、■■福祉事務所は、Bさんが給付金を受領したことによって生活保護法第26条に規定する「被保護者が保護を必要としなくなったとき」に該当するとして保護を廃止したため、Bさんは審査請求を行いました。
これに対し、山形県の判断は、経緯に鑑みてBさんが給付金をCさんの資産であると誤認したとしてもやむを得ない面があるといえ、また、実際に給付金のほぼ全額をCさんの口座に送金している実態を考慮すれば、「給付金は事実上Bさんの利用し得る資産と見なすことができない」ため、本件廃止処分を不当と判断し、処分取消の裁決をしました。
まとめ(結論)
以上の裁決事例を見るに、一時的に受け取った他人の金銭は、自身で利用せず、すぐにその他人に渡していれば収入認定されることはないと言えますね。
特に「受給者本人が利用し得る資産であるか否か」がその判断基準となるようです。
そのため、受給者本人の口座に入金があったことのみをもって機械的に収入認定を行い、ましてや保護の停廃止をするような福祉事務所がある場合は、審査請求でボコボコにされること必至です。
これらの件に限らずですが、支給額を減らす等の不利益変更を行う場合、当然に正当な理由が必要となります。
ケースワーカーの方は、機械的・画一的にではなく、各事案の実態を考慮して判断できるようにしておきましょう。
以上、ご確認の程よろしくお願いいたします。
コメント
いつも勉強させていただいております。
私がコラムを見落としている可能性もあるのですが、「もとけい様」のお考えの中で、今般の生活保護受給者が受け取れる「非課税世帯への給付金」や「児童に対する給付金」が「収入認定対象外」になっていることは、どうお考えでしょうか。
生活保護は、最低生活費を保障されており、コロナ禍において勤務先のからの収入が減った場合、生活保護費として補てんされます。
児童・生徒へは、給食がなく自宅で食事する分も手厚く補てんされました。
しかし、上記の給付金はもらえ「収入認定外」です。
こんなこと、まじめに生活保護の趣旨を考えケースワークをやっていておかしいとお考えになることはございませんか?
もしもまだ掲載されていないのであれば、お考えを載せていただきたいと思います。
はじめの一歩 様
コメントありがとうございます。
いわゆる臨時特別給付金等について、その趣旨目的等をふまえ改めて雑感的なものを記事にしてみましょうね。
もう少しだけお待ちくださいませ。