請求した生活保護費が満額支給されなかった場合は?覚えておくべき3つの要点

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生活保護制度における保護変更申請

生活保護を受けている方は、生活に必要な費用が生じた際、福祉事務所にその費用の支給を申請することがあると思います。
いわゆる「保護変更申請」というやつですね。
この申請を受け、福祉事務所は原則14日以内に支給か却下かを決定し、書面にて通知する必要があります。
(ちなみに、申請は様式を必要とせず、極端に言えば口頭でも申請として認められる場合があるのであしからず。)
申請や決定通知については、以前書いたこちらの記事をどうぞ。

審査請求(不服申立て)の事例

さて、ここで今回も事例の紹介です。
今回は、福祉事務所が申請却下を行う際、手続きに不備があり、処分自体が取消された事例です。
どちらかといえば、生活保護制度というよりは行政の手続きの話が多めですが、ケースワーカーも受給中の方もぜひ知っておくべき!

詳しくは以下のとおりです。
全文はコチラ(出典:生活保護裁決データベース)。

経緯(要約)
(1)審査請求人(被保護者、以下「Aさん」という。)は「ADLの低下により通院の際に付添人が必要となった」として、付添人がAさんに付き添った際の3日分の日当等として○○円を請求額として生活保護変更申請書を和歌山県■■福祉事務所に提出。
(2)■■福祉事務所は申請に対し、別冊問答集医療問64等を参考に、Aさんの申請した額の満額ではなく、××円(非常勤職員単価△△円×3時間×3日間)を支給することと決定し、Aさんに通知した。
(3)Aさんの請求○○円に対し、福祉事務所は××円のみの支給を認める一部却下決定を行ったが、保護変更決定通知書に一部拒否処分の理由が付記されていなかったため、「これは行政手続法に違反している」として、Aさんは代理人をたて、和歌山県に対し審査請求を行った。
(4)■■福祉事務所は「最小限度の実費として判断した金額は全額支給していることから、拒否処分は行っていない。よって拒否に関する理由を付記する必要はない」と主張している。

※なお、日当額の決定方法等については「違法・不当とは言えない」とされています。

その行政手続法にかかる部分の結果が以下のとおりです。

和歌山県の判断(要約)
 本件処分は、Aさんの請求額○○円全額ではなく、その一部である××円のみを支給する決定をしたものであり、申請に対して一部しか認めない決定をしていることから、一部拒否処分であるといえる。
 行政手続法第8条第1項において「申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない」と定められており、生活保護法第24条においても「保護の開始・変更の申請があった際は保護の程度等について書面をもって通知し、その決定の理由を付さなければならない」とされているため、本件においても一部拒否処分の理由を示さなければならない。
 これまでの判例においても「一般に、法が行政処分に理由を付記すべきものとしているのは、処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意(思うままにすること)を抑制するとともに、処分の理由を相手方に知らせて不服の申立に便宜を与える趣旨に出たものであるから、その記載を欠くにおいては処分自体の取消を免れない(最高裁昭和38年5月31日)」、「付記理由不備の瑕疵(過ち)は、後日これに対する審査裁決において処分の具体的根拠が明らかにされたとしても、それにより治癒される(瑕疵が解消される)ものではない(最高裁昭和47年12月5日)」と示されている。

 以上のことから、本件処分については処分理由付記に不備があり、裁決において処分理由が明らかとなった場合でも当該不備の瑕疵は治癒されず、処分自体の取消について免れるものではないため、本件処分を取消す。

…というように判断されました。

要するに、「付添人日当の計算方法や支給額自体は適正だったと思うけど、申請者の請求した額を満額支給せず、言うなれば一部却下したんだから、一部であってもその却下理由を通知書に記さなくちゃダメだよね」ということです。

まとめ

今回覚えておくべきことは
①保護変更申請により申請者が必要と主張する金額を請求された際、支給額がその請求額未満になると「一部却下」という取扱いになる。
②行政手続法と生活保護法により、一部却下を行う際は、その理由を決定通知書に明確に示さなければならない。
③理由を明確に示さず、審査請求(不服申立て)をされた場合、福祉事務所の処分が間違っていたとして、処分自体が取消しとなる場合がある。

…という点ですね。
正直、私も現役時代はここまで明確に手続きを理解していたとは言えないかもしれません…。
ケースワーカーは当然に手続きを適正に行い、不服申立てされないよう努めるとともに、受給者の方は不当な処分があった際は指摘できるよう知識を蓄えていきましょう!
 

以上、ご確認の程よろしくお願いいたします。

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