転居は自由?制限あり?
どうも、もとけぃです。
最近、質問箱にて転居(引っ越し)についてのご質問をいただくことが増えました。
どの質問においてもはやり「福祉事務所による許可の有無」が気になるようです。
そのため今回は、生活保護を受けている間は転居に制限がかかるのかといったことを中心に、裁決事例等を紹介していこうと思います。
転居とは
まず、生活保護法において居住地とは、実際に生計の本拠を構えている場所のことを言います。
わかりやすく言うと、実際に寝泊まりや身の回りの家事等を行っている場所のことです。
単に住民票があるところではない、というのがミソですね。
その場所から離れ、他の土地に新たな生計の本拠を構えた場合に、転居(元の世帯からの転出)として取り扱われます。
裁決事例
今回の裁決は北海道において行われており、全文はコチラです(生活保護裁決データベースより)。
…とはいえ、前半の部分は「桜を見る会」ばりに黒塗りになってしまっていますが(笑)
重要なのは判断の部分なので、説明していきましょう。
平成21年8月10日、■■福祉事務所(処分庁)は、被保護者(審査請求人)に対し、生活保護法第62条第3項の規定により、生活保護廃止処分を行ったところ、請求人は、廃止処分を不服として、同月16日に北海道知事に審査請求を行ったというものです。
法第62条による保護の停廃止は、前提として法第27条に基づく指導指示に違反したことにより行われるものなので、福祉事務所が被保護者に対して、事前に指導指示を行っていたということになります。
なお、法第27条は次のように定められています。
生活保護法(抄)
(指導及び指示)
第二十七条 保護の実施機関は、被保護者に対して、生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる。
2 前項の指導又は指示は、被保護者の自由を尊重し、必要の最少限度に止めなければならない。
3 第一項の規定は、被保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない。
法第27条第1項では福祉事務所が指導指示をできる規定が定められていますが、第2項及び第3項では指導又は指示の内容が目的を逸脱して、みだりに被保護者の権利を制限しないようにしなければならないこととなっています。
今回は①から④までと4つの指導指示がなされたようですが、ここでは③のみ公開されています。
そして、その③福祉部の許可なく転居しないことというのが問題となりました。
裁決においては、「居住地選択の自由が著しく制限される内容の指示を行っているが、このような許可を強制する権限は、処分庁(福祉事務所)に与えられていないのであるから、当該指示は、法で規定する指示の範囲を著しく逸脱しており、違法である」と判断されました。
結果として、この福祉事務所の廃止処分は取消しされています。
つまり、福祉事務所には生活保護受給者の引っ越しを制限する権利はないと述べられているということが言えますね。
転居にかかる費用について
さて、福祉事務所が転居自体を制限できないことは語ってきたとおりですが、いざ転居するとなると、引っ越し代(移送費)や敷金等、様々な費用が必要ますよね?
生活保護制度では、転居を制限しないこととは別に、転居費用を出すには一定の条件が必要になります。
ちなみに、敷金の支給要件についてはコチラ⇒徹底解説!生活保護費で敷金が支給されるケースとは?
要件に当てはまらなければ保護費は出ないため、「転居は自由だけどお金は出さないから、やるんなら勝手にやってね」と言っているような気もします。
そのため、もし自由に転居したいということであれば、現制度では自費負担も視野に入れないといけないでしょうね。
ひとまず今回は、福祉事務所の指導内容にも制限があるということをご理解いただけるとうれしいです。
以上、ご確認の程よろしくお願いいたします。
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